エンナの町

2011.07.20

エンナの町である。シチリア島のちょうど中心部のあたり「シチリアのへそ」と呼ばれているように、標高は九三一メートルで人口は二万八〇〇〇人。最寄りの一般道路に移り、だらだら坂をのぼっていった。高くなるにつれ霧が濃くなり、冷気の中で町がかすんだようになっていく、と書けばロマンチックな気分にもなるのだろうが、それよりも、内陸部の山の上にあるエトナは、イタリアでも貧しい人が多く住む地区のひとつなのである。なるほど町の広場や教会の前には、二〇日のニコシアでの様子と同じように、寒さにふるえる男達がいた。最近植えられたというメインストリートの並木も育ちが良くなく、枝々につけられた豆ランプのイルミネーションも心なしか寒々と見える。エンナも、シチリアの歴史を裏書きするように、他民族に揉龍されてきた。この地には、シチリアの先住民族で、最初の農耕民族でもあるシケル族が住んでいたとされているが、四方に見通しがきく山頂は当時から要塞としても絶好のロケーションであった。その後、紀元前七世紀にはギリシヤ人が、やがてローマ人、サラセン人、ノルマン人と、異民族による支配がくり返されたのである。