どんな靴をはくか、である。オーバー五〇世代は、ローファーで育ったIVY(アイビー)世代でもあり、年齢的にヒモ靴は着脱がつらいと感じるのを承知で、あえて、私はヒモ靴をはいてみることを提案する。ローファーの語源は「怠け者」。ヒモがついていない靴は、クラシックスタイルでは格下の存在だ。ローファーをはく場合は、スーツではなくジャケット&パンツのときに限ること日本では、外出先でも靴を着脱する機会がしばしばある。効率を考えたら、ローファーのほうが便利に決まっている。けれど、この一見、非効率的な部分に、クラシックスタイルの魅力が眠っていると、私は思う。靴ヒモを締めるときの、さあ出かけるぞ、という気持ち、靴ヒモを緩めたときの、少しホッとした気持ち、そこには今をいつくしむ時間がある。せっかく、義務としてではなく、愉しみとして装うことができる世代になったのだから、ひとつひとつの所作を丁寧に、余裕を持って生きたい。観劇の時間に間に合わない、と慌ててローファーを突っかけて駆け出していくような人生より、一時間も早めについて、連れと開演を待ちわびながら、紅茶を飲んでいる人生のほうがどれだけ豊かなことか。ヒモ靴をはくゆとりのある人生は、もちろん後者である。
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