萬里郷立托児所を例として、台湾の保育施設における異文化教育を考えてみたい。萬里郷立托児所の保育内容は、注音字母、数、時計と時間の授業のほかに、週2回、毎回30分の「美語」(アメリカ英語)の授業を年中児と年長児の全員に実施している。また、週1回、注音字母の宿題を出している。同託児所では、特別に原住民族語教育活動は取り入れていないが、保育士のほとんどが中国語/北京語を使用し、ときどき福老語を混ぜて子どもたちに話しかけている。福老語を使用する理由は、「母語だから」というものであった。さらに他の言葉を使用しない理由をたずねると、「他の言葉はできないから」という返答であった。しかし、保育士たちが「他の言葉」として想定するのは、原住民族語と客家語にかぎられており、当地では少数とはいえない東南アジア出身者の言葉は念頭にない様子であった。2003年度から、台北部政府は各保育施設に入園/所者の親の出身地資料を要請しはしめたことで、各保育施設の事務室には親の出身地資料が揃うようになった。また、この調査は主に担任保育士をとおして行われるため、この調査によって保育士は自分のクラスにいる外国人花嫁の子どもを把握できたと考えられる。しかしながら、保育士とのインタビューから、ほとんどの保育士は子どものけ親の国籍を知っても、その子どもが母親の国の言葉をしゃべれるかどうかにはほとんど関心がないように思われた。
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