もっとも、いつもいつも事がスムーズに運ぶわけではない。1つの財布を2人で使っているのだ。いさかいが生じることもある。若い夫婦ともなれば、収入のほとんどを生活費に費しているというのが現実だろう。赤ん坊ができれば、ミルク代やら、ベビー服代、しばらくすれば教育費と、家計は圧迫されていく。夫婦が自分たちのために使うお金はごく限られているのだ。その限られた予算をどう使うかについて、夫婦はしょっちゅう喧嘩する。1つの財布をめぐって、争奪戦がくり広げられるのだ。どちらが勝つか。夫婦の財布を先に握るのは、夫か、妻か。それは夫婦によって、それぞれだ。夫が財布を握る場合もある。たとえば、妻にある一定の金額を渡して、あとは全部自分で管理する夫もいる。管理という美名のもとに、残りは自分の小遣いにしてしまう夫もいるだろうし、妻に内緒の使いみちを持っているなんてこともあろう。反対に、すべてを妻にまかせて、毎日、決まった額を与えられる夫もいる。私が子供の頃、彼らは百円亭主と呼ばれていたように思うが、今はいくらになるのだろう。千円亭主とでもいうのだろうか。わが家の場合、結婚した当初は、妻たる私が家計を牛耳っていた。夫は大学院の学生だったから、使う小遣いの額もしれていたし、私は家計簿をつけていたので、キャッシュはすべて私が握っているのが自然だったのだ。当時、夫は私のことを「うちの大蔵大臣」と呼んでいた。ところが、子供が生まれると、私たち夫婦の立場は逆転した。同時に、私は「うちの大蔵大臣」の地位もあきらめざるを得なくなった。赤ん坊の世話に追われる私は、忙しくて銀行に行く暇がなくなってしまったのだ。「これからは銀行へは俺が行ってやるから」と言った夫にキャッシュカードを渡したのが、財布を握る立場が逆転するきっかけとなった。以来、わが家の家計は夫が握っている。もっとも、金銭を管理するのは、私より夫のほうがずっとうまい。私は銀行にいくらキャッシュがあるか、定期預金の満期がいつか、すぐ忘れてしまうからだ。銀行だけではない。自分の財布の中にいくらあるかもよく見ずにいることが多く、現金をほとんど持たずに外出したりしてはしょっちゅう冷や汗をかいている。しかし、夫は違う。定期預金の利率から、電車のキップを安く買う方法まで、お得な情報に精通している。私とはえらい違いだ。どうせ財布を管理するのなら、得意なほうがその役目を担うのがいいに決まっている。だから、私は取り上げられたキャッシュカードをあえて取り返そうとは思わないのだ。私の友人にもすべてご主人まかせで、自分は生活費だけ受けとり、欲しいものはカードで買う人がいる。彼女のご主人は銀行マンで、経済を専門に勉強した人なので、彼が管理するのがいちばんいいのだという。仕事がら財テクにも詳しく、住んでいるマンションの支払いも株の配当でまかなっているというからすごい。そうかと思うと、奥さんにすべてを握られて、身動きとれないとぼやいてばかりの男友だちもいる。「自分で稼いだ金なのによう。こんなことなら結婚なんてしなけりゃ、よかったぜ」などと、不満タラタラだ。しかし、それも自業自得である。彼は浪費家で、ちょっと目を離すと、どんどんお金を使ってしまう危険人物だからだ。奥さんが財布をまかせる気になれないのも当然だ。結局、夫婦の財布は金銭管理が得意なほうが握るというのが、いちばん効率的だし、お互いに幸福だと思う。るもっとも、効率的であればいいってものではない。さらに、プラスアルフアの要素が必要である。そこが、家計と銀行の金銭管理が違うところだ。夫婦の財布からはお金以外のものまで引き出せたとえば、夫婦の間に交わされる贈りものひとつとっても、もし、効率だけ考えるのなら、本人が欲しい物を勝手に買い、あとから請求書を回すというのがいちばんいい方法だろう。不必要なものを買う心配もないし、サイズ間違いなどの無駄も出ない。実際、結婚記念日のたびに、自分の欲しいものをカードで買い、夫に「サンキュー」と言うだけの妻もいる。本人同士がそれでよければ口出しすることもないが、私はなんだか味けないなと思う。的はずれであろうが、サイズが違っていて無駄になろうが、私は私のためにこっそり選んでくれた贈りものを受けとるほうがずっとうれしい。そういえば、知り合いにこう尋ねられたことがある。「夫が妻に贈る指輪。あれって、もらってうれしいんでしょうか。だって、あの指輪のお金は、結局は生活費から出てるわけですよね。どっちにしても、2人のお金から出たものをもらって、奥さんはうれしいものなのかな」、と。彼女はまだ独身である。確かに、スウィートテンダイヤモンドは煮ても焼いても食えない。そんなものを買うくらいなら、生活費の足しにしたほうがいいのではないかと思うのもよくわかる。けれども、私は、もし私がスウィートテンダイヤモンドをもらったら、とても喜んだと思う。たとえそのために生活費がピンチになって粗末な食事が続いたとしても、「よくスウィートテンダイヤモンドって宣伝してるでしょう?ほら、結婚10周年の記念代のためにクリーニング代を節約するやつ」たとえワイシャツを手洗いする羽目になっても、やっぱりうれしい。それは、夫がスウィートテンダイヤモンドという生活感のないものに夫婦の財布を開けたことに幸福を感じるからだ。夫婦の財布は、原則として、生活感にまみれたものを買うときに開く。そこから出たお金で食べているのだから、当然だ。だからこそ、生活とは関係のないもののために財布が開いたという事実に、妻の心はふるえるのだ。そこが、夫婦の財布と銀行の預金が違うところだ。銀行の預金からはお金しか引き出せないが、夫婦の財布からは、お金以外のものも引き出すことができるのである。だからこそ、世の夫婦たちは1つの財布をはさんで、年がら年中、笑ったり、怒ったり、悔やんだり、喜んだりと忙しいのだと思う。
[参考サイト]
東京南青山の教会挙式
http://www.le-anges.gr.jp/chapelle/wedding.html
東京の結婚式場なら南青山ル・アンジェ教会|表参道
http://www.le-anges.gr.jp/